漆掻き道具 その4|漆掻き技術(8)
漆掻き技術1では、全国に共通する漆掻き道具であり作業内容である旨を記しました。
それでも、各地を回り、漆掻きさんに会ってお話を伺うと特色ある道具に出合うことがあります。
そのいくつかを紹介します。ある地域で長年にわたって用いられ今に残る道具であったり、漆掻きさん個人の工夫によるものであったりします。とても興味をひかれるものです。
新潟県のヘングリ
漆掻き技術5の写真のエグリと似た刃物です。
エグリの傷跡は太丸刀と同様となりますが、ヘングリの跡はハコノミと同じと考えると分かりやすいと思います。
辺掻の作業において、カワムキで外樹皮を削って平滑にした後、傷方向にヘングリでさらに樹皮を削り、その後カキカンナで傷をつけます。
樹幹の太いウルシの木は樹皮も厚いため、カキカンナを入れる部分の外樹皮を削って白皮(内樹皮)を出し、その後のカキカンナで深い傷をつけることができるようになるといいます。
ひとつ多く道具の手間をかけていることで、ていねいな皮ごしらえをしていることになります。
新潟県猿沢(朝日村)から北条郷(柏崎市)に伝わったものだそうです。
エグリの柄の加工
浦目掻の時期になると、樹幹の下部や根からの採取量が多くなるといいます。そこで、用いるエグリの柄に工夫をすることになります。
根周りの土をはだけ取り去るために、柄の先端を両刃状に削り土に食い込みやすくします。さらに、その柄の材質には堅木を用いるのです。
青森県南から岩手県北にかけて広く見られますが、皆がそうしている訳ではありません。
カワムキの柄の工夫
この柄は漆掻きさんにより皆違うといってもいいように、様々な工夫がみられるものです。
カワムキは長い歯があり、用いる道具のなかでは最も危険が伴います。そのためのいろいろな工夫が見られます。
円形ばかりではなく、持ち手が滑らないように五角形状にしたり、さらに歯に滑りこまないように釘等をさしたりします。
作業中には背中に差し込むため先端部分を広くして、回転して背中に歯が触れないようにすることがあります。
また、徒歩で移動するときにはタガッポウのひもを巻きつけて腰にさすように柄を長くし、オートバイで移動するようになってからは短い柄にするようになったといいます。
目立作業で物差し代わりにするため、幾種類かの目印を刻む人もいます。
執筆者プロフィール
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昭和30年 青森県三戸郡新郷村谷地中に生まれる。
昭和52年 弘前大学 工業試験場 漆工課卒業
昭和52年~ 教職に携わり夏休み中に全国の漆産地を行脚
平成8年~ 平成21年度青森県史編纂調査研究員(文化財部会推薦)
平成28年~平成31年3月 青森県新郷村教育委員会教育長
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