端午の節句
文と写真:中根 多香子
風薫る五月、端午の節句を祝うテーブルをしつらえました。
わが家の定番メニューは、「勝男」に通じる鰹のたたき、「めでたい」鯛汁、「すくすく伸びる」筍の煮物など、縁起を担いだ旬のもの。
黄色が邪気を払うとされる黄飯(おうはん)は、漆塗りのお重に盛ることでいっそう華やぎます。
結婚のお祝いに頂いたお重は、「福を重ねる」という重箱が持つ意味も大切に、お正月だけでなく、節句に、おもてなしにと使うことで思い出を重ねてゆきます。
箱にしまい込まず、すぐ手の届く場所に収納することが出番を増やすこつでしょうか。
漆の器は、ハレの日もケの日もいつも暮らしに寄り添い、使うほどにその良さが分かってくるのです。
ふだん愛用している飯椀と汁椀も、折敷に据えるだけで凛とした雰囲気に。
季節の節目に頂く行事食は、大切に受け継ぎたい日本の美しい文化ですね。
また、強い香りが邪気を払うとされる菖蒲は「尚武」「勝負」に通じ、端午の節句に欠かせないもの。
わが家では、菖蒲湯だけでなく、さわやかに香り立つ菖蒲酒も大人の楽しみです。
屠蘇器に日本酒を注ぎ、菖蒲の根か茎葉を浸けるだけの簡単レシピ、ぜひお試しあれ。
柏餅は小ぶりのお重に詰めておけば乾かず安心ですし、和のおもてなしにもぴったり。
古より神聖な木とされる柏の葉は、新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、子孫繁栄の象徴です。
笑顔でテーブルを囲む、このささやかな幸せが続いてゆきますようにと願い、皆でいただきます。
ところで、漆塗りの効果のひとつに強い抗菌性があることをご存知でしょうか。
昔は、お正月にはおせち料理を塗りのお重に詰めて三が日保たせました。
今でこそ漆の抗菌作用は科学的に立証されていますが、「漆器に入れた料理は傷みにくい」、まさに先人の知恵です。
漆の水指(みずさし)を花器に見立て、花を生けていたところ、水が何日も清らかなままに保たれ、花はいきいきと長持ちすることに気づきました。
漆黒が花を引き立てるお気に入りの花入れゆえ、嬉しい発見でした。
漆を知るごとに、自然の偉大なる力を実感します。
植物と人との共生の歴史が、節句の習わしに息づいているのです。
今年もまた、まっすぐに伸びる菖蒲の花を生けました。
世界中の子どもたちの、健やかな成長を心から祈りつつ。
執筆者プロフィール
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漆芸プロデューサー / 箸文化大使
JAL国際線CA・要人接遇を経て、YUI JAPAN設立。「うるしのある麗しいくらし」をテーマに、心豊かなライフスタイルを提唱。美しい伝統を大切に、輪島塗、和の作法など日本の美意識を国内外へ伝え続けている。ウルシネクストパートナーとしてSDGsにも注力、漆を通じて平和で持続可能な社会を目指している。
公式Webサイト
https://yuijapan.jp
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