ふだんの漆で七草がゆを

文と写真:中根 多香子

せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ
すずな すずしろ 春の七草♪

和歌のリズムで口ずさみたくなる、人日の節句。
若菜とお米、自然界から新たな生命力をいただきます。

一月七日は「人日の節句」、「七草の節句」とも呼ばれ、桃の節句や七夕と並ぶ五節句のひとつで、七草がゆを食べて邪気を祓います。

人日(じんじつ)とは、元日から七日までを生きものにあてはめて吉凶を占うという、中国の古い習わしに由来しています。
元日は鶏、二日は狗(いぬ)、三日は羊、四日は猪、五日は牛、六日は馬、そして七日は人と、それぞれの日は占いの対象を大切に扱いました。
そのことから一月七日は「人日の節句」となり、人を大切にする日、無病息災や長寿を願う日となりました。

今の七草がゆの起源は、人日に七種の若菜を入れた汁をいただく中国古来の習わしと、年始めに春の野草を採る「若菜摘み」、そして七種の穀物で作ったおかゆをいただき豊穣と健康を祈る日本古来の習わしが結びついたもの、といわれています。

せり      競り勝つ
なずな     撫でて穢れを祓う
ごぎょう    御形(仏様の体)
はこべら    繁栄がはびこる
ほとけのざ   仏様の安座
すずな     神様を呼ぶための鈴
すずしろ    清らかな白

七草の一つひとつにも祈りがこめられています。
季節の習わしに寄り添い、感謝をもって暮らすと、一年中楽しくご機嫌に過ごせます。

若菜香る熱々のおかゆをいつもの漆椀と匙でいただくと、身も心もホッとあたたまります。
お正月の漆器は晴れやかで佳きものですが、こういうふだん使いにこそ、輪島塗の良さをしみじみ感じます。
「美味しい」は、味覚だけでなく五感で感じるもの。

手あたりのやわらかさ
口あたりの和やかさ

そんな心地よい感覚を日々味わい愛おしむことは、自分を大切にすることでもあり、「より豊かな暮らし」に結びつくと思うのです。
人に優しいうるし時間、今朝も穏やかに流れています。

 

執筆者プロフィール

中根多香子
中根多香子
漆芸プロデューサー / 箸文化大使

JAL国際線CA・要人接遇を経て、YUI JAPAN設立。「うるしのある麗しいくらし」をテーマに、心豊かなライフスタイルを提唱。美しい伝統を大切に、輪島塗、和の作法など日本の美意識を国内外へ伝え続けている。ウルシネクストパートナーとしてSDGsにも注力、漆を通じて平和で持続可能な社会を目指している。

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