日本のウルシの木 樹液の利用
漆液の利用はハチが知っていた
自分が住むところは、前には水田があり裏側は山林に囲まれています。夏の時期には、自宅の軒や雨樋の裏に毎年5・6個のハチの巣を発見し、対処に苦労します。
ハチの巣を見ていた若いころ、「あっ、漆だ」と思ったことがあります。軒の木材にハチの巣がつりさがっており、巣がくっついている部分が黒光りしていたのです。漆の光沢だと思いました。マッチ棒ほどの太さで、黒光り部分は長くありませんでした。その後、ハチの巣を見つけると木材や枝にくっついている部分に目が行くのですが、ハチの種類が変わり巣の形が変わっても、くっついている部分には黒いものが付いているのです。ハチが巣作りを始めるとき、ウルシの木からしみ出ている漆液を頂戴しているんだなと思います。強風でもハチの巣はくっついたままです。自然にある強力な接着剤を人間よりも先に利用していたんだと感心します。
ハチの巣・右は軒にくっついた部分の拡大
塗料そして接着剤としての漆液
土器や木器に漆液を塗ったり、漆液で土器を接合したり補修したりすることが縄文時代の古くから行われてきたことは、出土遺物により日本国内で広く確認できるものです。また、石鏃を矢柄に接着する際の膠着材として漆液が利用されたことも出土品が示すところです。石鏃というと狩猟道具であるとともに戦闘道具とも考えられます。
縄文時代から日常生活の器に用いられ、さらに武器へも利用できる漆液は、縄文時代の重要物品であっただろうと想像されます。
この後は時代を経るにつれ、ウルシの木・漆液は税となり、軍需物資ともなり、一方では生活を潤す漆器、特に加飾の技を高度に高めて日本人の生活を豊かにすることにもつながっていくのです。
執筆者プロフィール
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昭和30年 青森県三戸郡新郷村谷地中に生まれる。
昭和52年 弘前大学 工業試験場 漆工課卒業
昭和52年~ 教職に携わり夏休み中に全国の漆産地を行脚
平成8年~ 平成21年度青森県史編纂調査研究員(文化財部会推薦)
平成28年~平成31年3月 青森県新郷村教育委員会教育長
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