漆の技術・文化・歴史を未来に残すために

漆は縄文時代以降、日本人は漆を植え、育て、掻き、そして様々なものに活用してきました。ウルシネクストは、これらから未来に向けて新しい漆との関係を築いていくためには、これまでの日本人と漆との関係の歴史やそれを支えてきた道具や技術、資料といったものを保存し、人材を育成して次の世に日本の漆をしっかりと継承していきたいと考えています。

漆掻きの貴重な情報を公開しています

青森県の新郷村教育委員会で教育長を務められた橋本芳弘氏は教職に就かれている頃から、夏休みなどを利用して全国の漆の産地を訪ね歩き、ライフワークとして漆に関わる歴史や文化を研究されてこられました。

橋本氏が収集されてきた漆に関わる情報は文化的にも歴史的にも貴重な資料でもあります。漆の技術、文化、歴史を残したいというウルシネクストの思いに共感いただき、ご寄稿いただいております。

漆掻きは掠奪産業か?

漆掻きは掠奪産業か? ある県立図書館で市町村史をめくり、その地の漆掻き技術について調べていた時のことです。「漆産業(漆掻き)は掠奪産業であり、衰退することあるいは消滅することは当然である」旨を1行、2行記した文献を数点拝...

漆掻き道具 その7|漆掻き技術(11)

皮はぎ 『日本の民具』から 現在の漆掻き道具にいたるまでの、道具の形はどのように変化してきたのかと考えることがあります。そして、できることなら実際に目にしたいと願っています。しかし、消耗品であり、一般に忘れられた存在でも...

漆掻き道具 その6|漆掻き技術(10)

各地の資料館を訪ねて漆掻き道具を拝見します。そうすると東日本と西日本では違うんだなというものを見いだします。それは、漆液を集めるための容器であり、南部地方ではタガッポウやカキタル、ツッポウ、タルと呼ばれます。この容器の大...

ウルシの木の品種について

ウルシの木の品種について 鳥取市佐治町でのことです。そこは佐治漆と名をはせたかつての漆生産地です。そこで植栽した幼樹を見ていた時、佐治漆研究会長である山本達夫さんの言葉です。「かつては7枚目で止葉(とめば)と言っていた。...

漆掻き道具 その5|漆掻き技術(9)

枝掻の道具 エダガキヨウカンナ(新潟県) 正面に枝を置く台を据えて行う台掻きと、はしご等に枝の片方を置いて行う立ち掻きの2方法が枝掻にはあります。用いる道具の特色あるものは、竹をくり抜き、カンナに差し込んで用いるカンナグ...

漆掻き道具 その4|漆掻き技術(8)

漆掻き技術1では、全国に共通する漆掻き道具であり作業内容である旨を記しました。 それでも、各地を回り、漆掻きさんに会ってお話を伺うと特色ある道具に出合うことがあります。 そのいくつかを紹介します。ある地域で長年にわたって...

漆掻き道具 その3|漆掻き技術(7)

漆鎌の製造 前回はカキカンナの名称を用いましたが、福井県の記述に基づき今回は「漆鎌」を使用します。 粟田部漆鎌ともいわれ、「現在形に完成した創始者は初代春田惣兵衛であった」(『郷土史往来』)といいます。 左の写真は漆鎌の...

漆掻き道具 その2|漆掻き技術(6)

前回(漆掻き道具 その1)で見た道具の中で、漆掻きさんが自作できるものはタガッポウとドウグブクロです。 多くの道具は鍛冶から購入して、それに柄をつけて用いています。ヘラを自作する漆掻きさんは時には見られます。 タガッポウ...

漆掻き道具 その1|漆掻き技術(5)

下の写真は、岩手県浄法寺町とその周辺地域のある漆掻きさんが用いる漆掻き道具です。 個人により、地域により、さらに加える道具もありますが、写真の道具が現在の国内で共通するものと考えて差し支えないと思います。 ただし、それぞ...

作業のいろいろ その3|漆掻き技術(4)

枝掻(えだがき) 止掻を終えた11月は、岩手県浄法寺町とその周辺地域ではウルシの木は落葉し、雪が降る天気も多くなります。 その時期の漆掻き作業は枝掻となります。 枝にある漆液を樹幹におろさないために浦目掻で枝止めの傷をつ...

作業のいろいろ その2|漆掻き技術(3)

辺掻(へんがき) 前回は、2回目の傷・2辺目のあげやまで終えていました。 間3日おいて5日目に、3辺目をつけます。 最下部の目立部分では目立の上下に、最下部以外の部分では2辺目の上方に、2辺目より長く3辺目の傷をつけます...

京都府夜久野町 衣川光治さん|漆掻きさん(15)

自らは日本生漆研究会を設立し、日本に国立生漆研究所の設置を願いました。温厚な人柄の中にも熱い情熱を内に秘める方であると思います。 衣川さんは丹波の漆掻きさんで、丹波漆生産組合長を務められた方です。 丹波地方は、漆掻きの技...

茨城県大子町 山本みつさん 山本光二さん|漆掻きさん(14)

昭和51年、大子町に山本生漆問屋を訪ねたことがあります。漆掻きさんではないのですが、その内容には詳しいことからここに記します。 大子の駅を出ると、看板が目に付いたため、突然ですが玄関をたたいたのです。私の勝手な、しかも突...

福島県北塩原村 赤城 馨さん 福島県熱塩加納村 上野幸庫さん|漆掻きさん(13)

福島県北塩原村 赤城馨さん 祖父弁次郎さんは明治から昭和初期まで、父嘉一さんは大正から昭和の戦後まで、そして三代目の馨さんは昭和戦後から16年間漆掻きさんであった方です。 祖父と父は生涯漆掻きさんで通しており、その父につ...

新潟県柏崎市 佐藤佐平さん 新潟県朝日村 渡邊勘太郎さん|漆掻きさん(12)

新潟県柏崎市 佐藤佐平さん 佐藤家は、庄右衛門さん・平助さん・佐平さんと親子三代にわたり漆掻きを家業としてきました。 現柏崎市西長鳥はかつての北条郷であり、江戸時代からウルシの木が栽培され漆掻きも盛んで、この地域から採取...

青森県田子町 増田定雄さん 奥家 弘さん|漆掻きさん(11)

増田定雄さん 学生時代、前年から文献書物で漆掻きの作業を調べていました。そういう折、田子町で紹介された方が増田定雄さんです。 昭和50年4月、上郷の自宅を訪ねさせていただき、初めてお会いした漆掻きさんが増田さんです。その...

岩手県浄法寺町 小又米蔵さん|漆掻きさん(10)

浄法寺町の小又米蔵さんは、創意工夫の漆掻きさんであると考えます。 漆掻きの師匠は、增田榮松さんと堀口恵四郎さんだといいます。 周りの師匠や親方は職人気質で自分が持つ腕前を教えてはくれないが、二人の師匠はよくしてくれたとい...

岩手県浄法寺町 岩舘正二さん|漆掻きさん(9)

今回からは、実際にお話をうかがいご指導いただいた漆掻きさんについて書いていきます。 初めに取り上げる岩舘正二さんこそ、かつての浄法寺漆の名声を維持し、今日までその名をとどろかせた立役者であろうと考えます。 岩舘さんは、昭...

越前衆のこと|漆掻きさん(8)

明治41年、農商務省山林局から発行された『地方ニ於ケル漆樹及漆液ニ關スル状況』の中に、県別の出稼人數と入稼人數が示されています。多分明治40年の記録と思われます。 出稼人數をみますと福井1,560人、新潟102人、石川8...

南部生漆生産集荷組合のこと|漆掻きさん(7)

漆掻きさんを取りまとめる人物を元締と呼び、時期によっては漆集荷人とも漆業者ともいいました。 そして、そのような人物の多くは福井県出身の者であったことは、これまでの記述から明らかでしょう。 福井県人の活躍を象徴する組織がか...

公益財団法人お金をまわそう基金の助成先団体です

ウルシネクストは内閣府認定の「公益財団法人お金をまわそう基金」の助成先団体です。

日本の歴史、文化、芸術、技術を支えてきた漆を後世に繋げていくための漆の森づくり、地域振興を目指す事業の公益性やその意義に共感いただき、助成いただいております。

お寄せいただいた助成金は、相模漆の復活で国産漆を増やす植栽事業に活用させていただきます。

皆様からのご寄付、ご支援をよろしくお願いします!