作業のいろいろ その2|漆掻き技術(3)
辺掻(へんがき)
前回は、2回目の傷・2辺目のあげやまで終えていました。
間3日おいて5日目に、3辺目をつけます。
最下部の目立部分では目立の上下に、最下部以外の部分では2辺目の上方に、2辺目より長く3辺目の傷をつけます。
一般には7・8辺までは傷の長さを急激に伸ばし、9辺からは伸ばすよりも重ねていく状態の傷跡となるようです。(傷の伸ばし方は漆掻きさんの工夫が生きる場面であり個人ごとに異なり、後のコラムで取り上げる予定です)
間3日おいて5日目に(5日ごとに)傷を重ねていく作業を四日辺(よっかへん)といいます。
四分した一人山(一日山、二日山、三日山、四日山)を4日間で一巡し、5日目にまた一日山に戻るわけです。
このように、前回の傷の上方に(最下部は下方にも)傷を重ねていく作業を9月末までくり返します。
この作業を辺掻(へんがき)といいます。
6月10日頃から9月末までの110日間において5日目毎にくり返すことで、計算上は26~27辺の逆三角形状の傷のまとまりができます。
雨天時は作業ができないため平均22~23辺の傷のまとまりとなり、この部分を「しび」あるいは「ひび」と呼びます。
浦(裏)目掻(うらめがき)
9月下旬になると気温は低くなり、辺掻の傷からの漆液は少なくなりなす。
そうなると、辺掻を終え浦目掻の作業へ移ることになります。
最下部のしびでは最後の辺掻の下方と目立に重ねて、さらに最後の辺掻の上方に傷をつけます。
その外のしびでは、目立の下方と最後の辺掻の上方に、さらに上方の樹幹や太い枝にまで傷をつけます。
傷の長さは樹幹の周囲の2分の1強にもなります。
浦目掻は「一日山に5日を要する」といい、一人山には20日間を費やしています。
止(留)掻(とめがき)
浦目掻の傷と傷の間に1本の傷をつけるものが止掻の傷であると考えてください。
滲出量の多い場合は2本の傷となったり、浦目掻の傷より長いものがあったり、位置により短いものとなったりします。
また、上方の樹幹や太い枝には、浦目掻の傷の中間に90度方向をずらして傷をつけます。
樹幹を上方から見ると、これまでの辺掻、浦目掻の傷に加え止掻の傷により、樹幹を一周する傷がついたことになり、ウルシの木の働きが止められ枯死することになります。
止掻の期間は10月20日頃からおよそ10日間です。
止掻の作業終了後あるいは晩秋には樹幹の根元から伐採すると、翌春には萌芽がでて生長します。その中から1本を育てると、実生からのものよりも早く生長し、再び採取の対象となるものに育ちます。
執筆者プロフィール
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昭和30年 青森県三戸郡新郷村谷地中に生まれる。
昭和52年 弘前大学 工業試験場 漆工課卒業
昭和52年~ 教職に携わり夏休み中に全国の漆産地を行脚
平成8年~ 平成21年度青森県史編纂調査研究員(文化財部会推薦)
平成28年~平成31年3月 青森県新郷村教育委員会教育長
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