漆産地の広がりと固定化 <近世の日本2>

漆産地の広がりと固定化  <近世の日本2> 古代や中世の項でも見た『増訂工芸志料』で、江戸時代の栽培や生産を探すと、以下のものがありました。 ○貞享年間、此の際漆を産する諸国は漆を以って貢物と為し、或いは漆永と称し永銭〔...

漆生産を支えた明治期農民 <近代の日本1>

漆生産を支えた明治期農民 <近代の日本1> 明治維新となりました。侍の世から近代国家への夜明けです。国内全てが大混乱の時期です。『現代日本漆工総覧』には、次の記述があります。 また徳川時代幕府及び各藩の保護政策のもとに育...

漆掻き道具 その7|漆掻き技術(11)

皮はぎ 『日本の民具』から 現在の漆掻き道具にいたるまでの、道具の形はどのように変化してきたのかと考えることがあります。そして、できることなら実際に目にしたいと願っています。しかし、消耗品であり、一般に忘れられた存在でも...

漆掻き道具 その6|漆掻き技術(10)

各地の資料館を訪ねて漆掻き道具を拝見します。そうすると東日本と西日本では違うんだなというものを見いだします。それは、漆液を集めるための容器であり、南部地方ではタガッポウやカキタル、ツッポウ、タルと呼ばれます。この容器の大...

漆掻き道具 その5|漆掻き技術(9)

枝掻の道具 エダガキヨウカンナ(新潟県) 正面に枝を置く台を据えて行う台掻きと、はしご等に枝の片方を置いて行う立ち掻きの2方法が枝掻にはあります。用いる道具の特色あるものは、竹をくり抜き、カンナに差し込んで用いるカンナグ...

漆掻き道具 その4|漆掻き技術(8)

漆掻き技術1では、全国に共通する漆掻き道具であり作業内容である旨を記しました。 それでも、各地を回り、漆掻きさんに会ってお話を伺うと特色ある道具に出合うことがあります。 そのいくつかを紹介します。ある地域で長年にわたって...

漆掻き道具 その3|漆掻き技術(7)

漆鎌の製造 前回はカキカンナの名称を用いましたが、福井県の記述に基づき今回は「漆鎌」を使用します。 粟田部漆鎌ともいわれ、「現在形に完成した創始者は初代春田惣兵衛であった」(『郷土史往来』)といいます。 左の写真は漆鎌の...

漆掻き道具 その2|漆掻き技術(6)

前回(漆掻き道具 その1)で見た道具の中で、漆掻きさんが自作できるものはタガッポウとドウグブクロです。 多くの道具は鍛冶から購入して、それに柄をつけて用いています。ヘラを自作する漆掻きさんは時には見られます。 タガッポウ...

漆掻き道具 その1|漆掻き技術(5)

下の写真は、岩手県浄法寺町とその周辺地域のある漆掻きさんが用いる漆掻き道具です。 個人により、地域により、さらに加える道具もありますが、写真の道具が現在の国内で共通するものと考えて差し支えないと思います。 ただし、それぞ...

漆掻き作業のいろいろ その1|漆掻き技術(2)

原木の買いつけ 漆掻きを行うためにはウルシの木を確保しなくてはなりません。 一定の地域内にまとまった本数を確保することが理想ですが、原木(げんぼく)がないと言われる今日では年中林業関係者から情報を集めて探しまわり、その都...

漆掻きは掠奪産業か?

漆掻きは掠奪産業か? ある県立図書館で市町村史をめくり、その地の漆掻き技術について調べていた時のことです。「漆産業(漆掻き)は掠奪産業であり、衰退することあるいは消滅することは当然である」旨を1行、2行記した文献を数点拝...

漆掻きさんの創意と工夫(6)

漆掻きさんの創意と工夫 6 事故への対処 漆掻きという仕事はウルシの木という自然が相手です。すると、人間の力ではどうすることもできない場面に出会うことになります。毛虫が大発生して葉を食べ尽されてしまうと漆液は滲出しなくな...

漆掻きさんの創意と工夫(5)

漆掻きさんの創意と工夫 5 傷のつけ方の工夫(2) 辺の傾き ウルシの木に向かって立ち、カキガマを持つ腕を伸ばして奥にカマグチを入れ、そのまま手前に引いて傷をつけます(辺を立てます)。辺の始まりを辺がしらと呼び、手前のカ...

漆掻きさんの創意と工夫(4)

漆掻きさんの創意と工夫 4 傷のつけ方の工夫(1) カキガマのカマグチ部分を用いて樹皮をむき取り傷をつける作業のことです。傷のことを、「辺を切る」「目を立てる・目をのばす」などと用いることから辺や目と呼ぶ場合があります。...

漆掻きさんの創意と工夫(3)

漆掻きさんの創意と工夫 3 二重皮ごしらえの工夫 一般にカワムキで外樹皮を削って平滑にした後で、カキカンナで傷をつけるのですが、その間にもうひと手間を加えた作業を行う地域があります。その地域で工夫されたものです。 ウルシ...

漆掻きさんの創意と工夫(2)

漆掻きさんの創意と工夫 2 足場の掛け方 田子町でのはしご木 ウルシの木の樹幹に向かい、一般に片側に5本の目立の傷をつけ、その後5しびをつくることは、普通身長の人が地面に立ち手の届く範囲であることから導き出された数である...

漆掻きさんの創意と工夫(1)

漆掻きさんの創意と工夫 1 漆掻きさんの仕事に同行して話をうかがうと、長年の経験に基づく作業等の工夫を拝見し、心に残るものがあります。そのいくつかを紹介します。 「立(た)て」のつくり方 漆掻きさんは、その日に採取するウ...

漆掻きさんの人数(6)南部漆生産地域の人数

南部漆生産地域の人数 「南部漆生産の特相に就て」(小泉幸之助著 昭和14年1月)と題する小論があります。その内容は、越前漆掻工である福田源三郎氏(60歳)が話す内容を中核とするものであり、福田氏は17歳の青年時代から今日...

漆掻きさんの人数(5)大正期の国の調査による人数

大正期の国の調査による人数 大正12年に『漆樹及漆液ニ關スル調査』(農商務省山林局)が発行され、その中に「漆液掻取人夫(明治四十年大正六年)現在數比較」と題する表があります。大正6年分だけを見てみましょう。 稼人数の多い...

漆掻きさんの人数(4)福井県の漆掻きさんの出稼人数

福井県の漆掻きさんの出稼人数 断片的資料しかないのですが、福井県の出稼ぎ人数を見ていきます。 『福井県史 通史編4近世二』には以下の3点があります。 「天保三年には、鯖江藩領東庄境組と庄田組の内三二か村から四八〇人が漆掻...

漆掻きさんの人数(3)青森県の漆掻きさんの人数

青森県の漆掻きさんの人数 『明治40年青森県統計書』の中に漆掻きの状況を見ていきます。 工業の中に「漆液」があり、次のようになっています。 正味・瀨濕・雑液の合計生産量 左の郡別生産量 製造戸数 左の郡別戸数 9,848...

漆掻きさんの人数(2)明治期の国の調査による人数

明治期の国の調査による人数 明治41年には、国内各地方の報告をまとめた『地方ニ於ケル漆樹及漆液ニ關スル状況』(農商務省山林局)が発行され、各地の掻取人数を知ることができます。掻取人数は漆掻きさんの人数であり、全国では3...

漆掻きさんの人数(1)

ここで、漆掻きさんの人数を見ていきます。名称は漆搔工、漆掻職人、たんに漆かきと記載されたりします。調査関係では漆掻人夫や漆掻職などと記述されることもあります。 漆掻きさんの人数 漆生産を支えた明治期農民 <近代の日本1>...

漆器とSDGs的ライフスタイルのすすめ-森林文化協会グリーンパワー誌掲載

公益財団法人 森林文化協会が発行の月刊誌グリーン・パワーにて連載中 漆で未来は変えられる 03 グリーンパワー3月号 漆器とSDGs的ライフスタイルのすすめ...

漆は持続可能な社会に向けた希望と光-森林文化協会グリーンパワー誌掲載

公益財団法人 森林文化協会が発行の月刊誌グリーン・パワーにて、「漆で未来は変えられる」として、漆を切り口に持続可能な社会の実現を考えるウルシネクスト代表の柴田幸治による1年間の連載がスタートしました。 漆で未来は変えられ...

漆の話題まとめ-2019年6月3日

今日の話題 注目のニュース 絵文字「うるしピクト」本格導入へ 越前漆器の違い一目瞭然 漆器づくりの塗装、素地、機能、手法を絵文字のピクトグラムで。消費者に漆器の価値が正しく伝わることに大きな期待を持ちました。 京都で活躍...

漆の話題まとめ-2019年5月7日

今日の話題 注目のニュース 国産漆の生産拡大期し 盛岡市内で種まきと植樹 NPO法人のウルシネクスト 首都圏からも参加者 飯舘で国産「漆」生産始まる 村の若者ら広大な土地に苗木植樹 いいたて漆生産プロジェクトスタート 遊...

漆の話題まとめ-2019年5月31日

今日の話題 注目のニュース 銀座でショートフィルムのコンテスト初開催 最優秀作品賞にオーストリアの監督作品 最優秀作品賞に選ばれたのは「金継ぎ」がテーマのドキュメンタリー。どんな作品なのか、早く観てみたいです! 運慶作の...

漆の話題まとめ-2019年5月2日

今日の話題 注目のニュース 芸大生こだわりの必需品の数々最終兵器「響声破笛丸」って一体何だ? 芸大生のなかなかキビしい「懐事情」楽器は100万円単位! 材料はオークションで競り落とす! 家屋修復! ブライダルの聖歌隊!...

漆の話題まとめ-2019年5月23日

今日の話題 注目のニュース 山中漆器の職人が作った「ままごと漆器」発売! 日常の生活から漆器が縁遠くなり、子供が漆器にふれる機会が減る中で、おもちゃとしても遊べる漆器というのはいいですね! 倉敷・旧野崎家住宅所蔵の漆器展...

公益財団法人お金をまわそう基金の助成先団体です

ウルシネクストは内閣府認定の「公益財団法人お金をまわそう基金」の助成先団体です。

日本の歴史、文化、芸術、技術を支えてきた漆を後世に繋げていくための漆の森づくり、地域振興を目指す事業の公益性やその意義に共感いただき、助成いただいております。

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