福島県飯舘村は、原発事故により、一部地域を除き避難指示が解除されて4年経った今も、村内に住む人口は震災前の6,500人から1,500人程度に留まっています。帰村が叶っても、原発事故以前の暮らしに戻れるわけではありません。
土地についても同様です。避難による担い手の急激な減少と放射能の影響とで、かつて水稲や花き、畜産などに力を入れてきた村の産業は衰退し、多くの農地が耕作放棄地になっています。

2019年5月、村議を中心に村の耕作放棄地を活用した農作物に代わる新たな産業育成として、漆の産地化を検討し、試験的に村内3カ所に約600本のウルシ苗木の植樹を実施しました。昨年は、取り組みにご賛同いただいた有志の方々からのご寄付で、さらに500本を植樹しました。

2019年5月の植樹風景

まずは試験栽培によって飯舘の地でしっかりと育つのか、放射性物質が漆に及ぼす影響がないかを確かめつつですが、国産漆への貢献と、SDGsに沿った6次産業化を目指して、飯舘の畑で漆を育てる試みを始めています。

2021年5月の圃場整備作業

2 岩手県盛岡市上米内

漆の森づくりの活動の拠点として、昨年4月に一般社団法人次世代漆協会が、JR東日本とともに無人駅だった上米内駅をカフェと漆工房にリニューアルしました。ウルシネクストは、企画立ち上げからリニューアルオープンに向けた準備を全面的に支援しました。

この企画は、地域の活性化を目的とした、JR東日本とCAMPFIRE共同による「地域にチカラを!プロジェクト」。「地域商品開発」と「無人駅の活用」の2つのテーマで地域をより元気に、より魅力的にするアイディアの公募を行い、選出されたアイデアをクラウドファンディングで支援を募り、JR東日本の協力を得ながら具現化していくというものです。

上米内駅を漆の森づくりの拠点として、地域が一体となって漆の振興と地域の活性化を目指していく構想が、36件の応募の中から選ばれた2件のうちの1件となりました。飲料を提供するカフェ機能と漆工房を備え、漆器類や産直野菜の販売、漆塗り体験ワークショップや県博物館の講師を招いての出張講座などを行っています。

また春と秋の植樹の時期には、ボランティアの皆様の拠点として使用するなど、地域住民だけではなく、ウルシ関係者や県内外からの来訪者が気軽に立ち寄れる場所として、地域に産業と人を呼び込む賑わいのある拠点になることを目指しています。

3 奈良県曽爾(そに)村

奈良県曽爾村は「ぬるべ(漆部)の郷」とも言われ、日本の漆文化の発祥の地とも言われています。古くは奈良・平安期に漆を司る政庁「塗部造(ぬりべのみやつこ)」を置いていたという記録も残っているようです。

漆の歴史と深い関わりのある曽爾村では、その後漆産業自体が衰退してしまいましたが、2005年に地元の有志らが漆を復活させたいとの想いで「漆ぬるべ会」を立ち上げ、植栽を始めました。それでも一度衰退した漆は、当初はなかなかうまく育たなかったようです。

その後2019年には官民一体となって植栽などに取り組むプロジェクトを本格的にスタートさせ、植栽だけではなく、漆を使った商品づくりや観光など、村の産業としての復活に取り組んでいます。

ウルシネクストは、かつて漆が植えられ、その後廃れたままになっている全国の里山を何とか蘇らせて、地域全体が潤うような仕組みをつくるお手伝いをしたいと思い、村役場からのご相談もあって、プロジェクト立ち上げ段階の企画や広報面でサポートさせていただきました。

PAGE TOP