現在まで続く日本各地の漆掻き法は、越前式殺掻法(えちぜんしきころしがきほう)といわれるものです。
漆掻きさんに越前出身者が多いことはこれまでの記述からお分かり頂けたと思います。越前の地から国内各地へ出かけていたことから、名称こそ異なる場合があっても漆掻き道具や作業内容は全国共通であると考えてもいいと思います。
漆掻きの仕事に関わる名称はすこし分かりにくいものもありますので、自分は時期による作業名や採取する漆液の名称を下の図1のようにまとめて示し(漆掻き年暦と呼べるかもしれません)、講話や説明に用いています。
図1に示した時期は、岩手県浄法寺町とその周辺地域のものととらえてほしいのです。ただし、雨が1週間降り続くとその分作業が遅れます。また、漆掻きさんによっては取り組まない作業・仕事をも盛り込んだものです。そこで、一般論としては通用すると思いますが、特定の個人の漆掻きさんには適応できるとは限らないことはご了承いただきたいのです。
漆掻きの時期は夏から秋にかけての暖かい時期ですから、岩手県浄法寺町とその周辺地域より南方や西方のより暖かな地域は、ウルシノキの生育により適しています。漆掻きにも適した地域であると考えられます。
漆掻きはウルシノキの樹皮を切って、そこから滲出する漆液を採取する作業となります。樹皮を切った部分をキズと呼んだり、辺(へんと読み、返を充てることもあります)と言ったりします。
本コラムでは、キズは「傷」の漢字を用います。
執筆者プロフィール
橋本芳弘
昭和30年 青森県三戸郡新郷村谷地中に生まれる。
昭和52年 弘前大学 工業試験場 漆工課卒業
昭和52年~ 教職に携わり夏休み中に全国の漆産地を行脚
平成8年~ 平成21年度青森県史編纂調査研究員(文化財部会推薦)
平成28年~平成31年3月 青森県新郷村教育委員会教育長