自らは日本生漆研究会を設立し、日本に国立生漆研究所の設置を願いました。温厚な人柄の中にも熱い情熱を内に秘める方であると思います。
衣川さんは丹波の漆掻きさんで、丹波漆生産組合長を務められた方です。
丹波地方は、漆掻きの技術が早くから発達した地方の一つではないかと関心を寄せる地域です。中国の漆事情には詳しく、自ら文章を綴られ、漆掻き現場では顕微鏡で漆葉の病気を観察するなど、丹波漆をこえて日本産漆を取り巻く現状の改善と日本産漆の可能性を求めて行動する姿が印象に残ります。
昭和63年8月、漆シンポジウムが開催されました。開会後の基調提言の一人として、丹波漆生産組合長の衣川さんの姿がありました。「日本産漆の生産者として」と題し、漆の心を知ってこそ漆の生理についての結論を導くというものです。翌日には、漆掻き作業の実際を示されました。
京都府は『丹波漆(漆の搔き方)』を発行しました。そのまえがきには
氏は、ただ一人丹波漆掻きの伝統技術を守ってこられた方で、伝統技術と長年の経験に加え、氏の研究心に培われた漆掻き技術の真髄をこの小冊子にまとめてくださいました。
とあります。衣川氏個人が身に付けた技法がまとめられ、的を射た内容となっています。
執筆者プロフィール
橋本芳弘
昭和30年 青森県三戸郡新郷村谷地中に生まれる。
昭和52年 弘前大学 工業試験場 漆工課卒業
昭和52年~ 教職に携わり夏休み中に全国の漆産地を行脚
平成8年~ 平成21年度青森県史編纂調査研究員(文化財部会推薦)
平成28年~平成31年3月 青森県新郷村教育委員会教育長