漆掻き道具 その5|漆掻き技術(9)

枝掻の道具

エダガキヨウカンナ(新潟県)

正面に枝を置く台を据えて行う台掻きと、はしご等に枝の片方を置いて行う立ち掻きの2方法が枝掻にはあります。用いる道具の特色あるものは、竹をくり抜き、カンナに差し込んで用いるカンナグルマです。辺掻きで用いたカンナも利用しますし、かつては枝掻き専用のカンナも見られました。

瀨占掻の道具

春からその年に伸びた若い枝から漆液を採取する作業は、瀬占掻です。掻き台の上にのせた枝に、あるいは左手で立てて支えた枝に、瀬占包丁で樹皮に傷を入れます。削り取るのではなく、刃物を入れて樹皮を切るということです。瀬占包丁は、刃物であれば利用できたものであり、その土地により異なり、統一されていない道具であろうと考えています。

切った樹皮から漆液がしみ出てきたら瀨占ベラで採取します。この瀨占ベラのあて方は、刃先は軽く、腹をしっかり押して、しぼるようにして採ることになります。強くあてると、木部から若い樹皮をはがすことになります。しぼり採った漆の量は微々たるものであり、現在では行われないと考えていいと思います。

瀨占ベラ(奈良県)

現在、南部地方では瀨占掻の道具を確認できないままです。また、かつて瀨占掻が行われた地域も確定できないでおります。その手がかりの情報をお願いします。

執筆者プロフィール

橋本芳弘

昭和30年  青森県三戸郡新郷村谷地中に生まれる。
昭和52年  弘前大学 工業試験場 漆工課卒業
昭和52年~ 教職に携わり夏休み中に全国の漆産地を行脚
平成8年~  平成21年度青森県史編纂調査研究員(文化財部会推薦)
平成28年~平成31年3月  青森県新郷村教育委員会教育長

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